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テレビ、ラジオ、Twitter、ニコニコ生放送、Ustream……。マスメディアからソーシャルメディアまで、新旧両メディアで縦横無尽に活動するジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介が、日々の取材活動を通じて見えてきた「現実の問題点」や、激変する「メディアの現場」を多角的な視点でレポートします。津田大介が現在構想している「政策にフォーカスした新しい政治ネットメディア」の制作過程なども随時お伝えしていく予定です。

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「アジカン」ゴッチと一緒に考える3.11後の日本(津田大介の「メディアの現場」vol.51より)

津田マガ記事


(※この記事は2012年10月24日に配信された記事です)

 

◆「アジカン」ゴッチと一緒に考える、3.11後の日本

(2012年9月11日 J-WAVE『JAM THE WORLD』「BREAKTHROUGH!」より)
出演:後藤正文(ミュージシャン)、高橋杏美、津田大介
企画構成:きたむらけんじ(『JAM THE WORLD』構成作家)

 

高橋:今日、2012年9月11日はアメリカ同時多発テロからちょうど11年。そして、3.11から1年半が経った節目の日です。そんな今夜のゲストに、ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」[*1] の後藤正文さん [*2] をお迎えしました。後藤さんは3.11の震災と原発事故をきっかけに、歌以外でメッセージを発信する場として『THE FUTURE TIMES』[*3] というフリーペーパーを創刊されました。なんと、制作費の全てを自腹で賄っているのだそうです。

津田:アーティストがメディアを作って情報を発信する試みも珍しいですが、デジタル全盛の今、あえてタブロイド版の紙媒体にこだわったというのが面白いですよね。実際に読んでみると、レイアウトや写真、原稿など、どれもしっかりと作られている。今年の「フジロックフェスティバル」[*4] の脱原発イベント「ザ・アトミックカフェ」[*5] で後藤さんと共演する機会があって、本人ともそんなことを話しました。今日は、福島県や原発について考えていることや、『THE FUTURE TIMES』を通じてそれをどう伝えていくのかといったことをお伺いしたいと思います。

高橋:それではさっそくご紹介しましょう。「ASIAN KUNG-FU GENERATION」の後藤正文さんです。こんばんは、よろしくお願いします。

後藤:よろしくお願いします。

高橋:後藤さんが自ら立ち上げ、編集長を務めるフリーペーパー『THE FUTURE TIMES』は、2011年7月に配布した創刊準備号から数えてすでに4号が発行されています。改めて、なぜ今こういうメディアを作られたのでしょう?

後藤:震災と原発事故をきっかけに、音楽以外のかたちでメッセージを発信したくなった——それは先ほど紹介してもらったとおりなのですが、情報をどんな「媒体」に焼き付ければいいのか、すごく悩みました。津田さんの言う「アナログ媒体なのか、デジタル媒体なのか」という点ですね。長年音楽に関わっている身として、CDというメディアの時代が終わりに近づいていることは肌で感じています。でも、音楽がどんどんデジタルに移行していく一方で、最近はあえてレコードを出すのがアーティストたちの間で流行っているんですね。デジタルは「未来」なんだろうけど、アナログならではの強さもあるのではないか——そう思い、ウェブと紙の両方で作ることに決めました。

 

◇勉強、取材、決断……素人編集長の奮闘

津田:実際にメディアを運営していく中で、後藤さんが編集長なわけですよね。編集長というのはメディアの顔でもありますし、「この考えを軸にメディアを作っていく」ということを決めないといけない。『THE FUTURE TIMES』には「これだ!」という編集方針があるのでしょうか?

後藤:そこが素人編集長の難しいところで、実は「これだ!」という編集方針は特にないんですよ。「こんな情報が載ってるから読め!」みたいな上から目線のメディアにはしたくなくて、手に取ってくれた人が考えたり、話したりするきっかけになってくれればいい。僕も実際に取材へ行くのですが、いつも「教えてもらう」という姿勢で臨んでいますから。

津田:『THE FUTURE TIMES』を作りながら自分も勉強している、と。とはいえ、これまで発行した4号には、自然エネルギーの専門家や農家などさまざまな人が取り上げられています。「誰に取材するのか」といった企画を考えるのは後藤さんなんですよね?

後藤:そうですね。あとは、『THE FUTURE TIMES』の考えに賛同して集まってくれた有志の編集スタッフがいるので、毎号彼らと会議を重ねながら作っています。スタッフが「今、この人が面白い」といったアイデアを出してくれたら、その意向はできる限り汲み取りたい。今のところ、企画はみんなで考えながら「何かあったら責任は僕が取ります」という体制で運営していますね。

津田:なるほど。もう一つ、メディアの編集長の役割としては「責任を取ること」のほかに「決断すること」があると思うんです。編集スタッフの間で意見が割れてしまったけれど、どちらかに決めなくてはいけない——そんな時の決断は、後藤さんがするんですか?

後藤:一応僕がすることになっているけれど、メンバーの中にはプロの書籍編集者や雑誌編集者もいるので、みなさん厳しいんですよ。「後藤さん、その企画では弱い」って、どっちが編集長なのかわからない(笑)。

高橋:そういう部分も含めて勉強されているんですね。

後藤:それぞれがプライドと高い意識をもって参加してくれている。ありがたいことだと思いますよ。

津田:「立場が人を育てる」こともありますからね。実際、『THE FUTURE TIMES』は発行されるたびに進化している。後藤さんも編集長として日々成長されているんだと思います。今はみなさん自腹で制作に参加しているとのことですが、たとえば広告収入を得るなりして継続性のある運営体制を整えるつもりはないのですか?

後藤:考えすぎだとは思いますが、広告を取ってクライアントから口を出される——言いたいことが言えなくなるのは嫌だなぁと。あと、ビジュアル面でも、広告が入ることでデザインが崩れそうだというか……。逆に考えると、広告ありきでレイアウトが完結している既存メディアは本当にすごいなと思うのですが、僕はそういうところから離れてやってみたいという気持ちがあります。

津田:これ、毎号何部ぐらい刷っているんですか?

後藤:7万部ぐらいですね。

津田:その部数がはけている状況なんですか?

後藤:どうなんでしょう……もしかしたら、余ってどこかの倉庫に眠っているものもあるかもしれませんね。

津田:実際に『THE FUTURE TIMES』を配布してみて、紙ならではの反応ってありました?

後藤:最初にこのフリーペーパーを手に取って読んでくれるのは「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のファンだったりすると思うんです。でも、その子が読み終えた『THE FUTURE TIMES』を喫茶店やレストランに置き忘れたり、職場に置きっぱなしにすることで、思いもよらなかった人の手に渡ることがあるんですよ。以前、福島県の南相馬市で取材をしていたら、現地で林業をしているおじいさんに「創刊号の記事『循環する産業とエネルギー』[*6] を読みました」と言われて。記事に影響されて、ペレットストーブ [*7] の研修を受けに新潟へ行くことになったと聞いて驚きました。そういうことが起こるかもしれないという期待や予感はありましたけど、実際に体験するとやはり感動しますね。

津田:紙媒体ならではの予想しなかった広がり方があったということですね。その一方で、後藤さんはツイッターで19万人以上のフォロワーを抱えてらっしゃる。『THE FUTURE TIMES』の感想がツイッターで寄せられることもあると思うのですが、いかがですか?

後藤:もちろんあります。やっぱりツイッターやFacebookの拡散力はすごいなぁと思います。ただ、「Hi-STANDARD」[*8] の横山健さん(@KenYokoyama)との対談記事 [*9] へのリンクを含むツイート数が1500を超えるのに対し、バイオマス——家畜排泄物や植物を利用した再生可能な有機性資源 [*10] についての記事に関するツイートは100以下だったりと、記事によって反応の差が大きい。これはネットいいところでもあるんでしょうけど、みんなが興味をもつ記事だけがあっという間に広まっていくという印象はありますね。

津田:逆に言うと、作り手が「読んでほしい」と思っても、読者にとって興味のないものはなかなか広まらない。好きなものだけつまみ食いされてしまいがちなんですよね。紙の場合、1ページ目から読んでいけば、何となくすべての記事に目を通すことになりますから。

後藤:そうなんですよ。

高橋:フリーペーパーのほかにも、後藤さんはいろいろなかたちでメッセージを発信してらっしゃいます。たとえば3.11以降に行われたライブでは、“NO NUKES”と表示した巨大モニターの前で演奏されました。そういうパフォーマンスについて、ファンの反応はいかかですか?

後藤:「よくやった」と評価してくれる人もいますけど、一方で「暑苦しい」と感じている人もいるかもしれないですね。「音楽に政治的なメッセージを持ち込んでくれるな」という人は一定数いるでしょうし。実際に批判されたわけではありませんが、ライブに来てくれたすべての人がツイッターや掲示板に感想を書き込むわけではないので、本当のところはわからないです。

津田:今でこそ、社会問題に対するメッセージを発信したり、社会運動を牽引するアーティストやクリエイター、俳優が日本でも出てくるようになりましたが、3.11以前にはそのような動きはほとんどなかったと思うんですね。というか、今も日本では「社会運動にはコミットしない」というスタンスのアーティストが海外に比べると圧倒的に多いように感じます。そんな人たちの姿勢についてはどう感じてらっしゃいますか?

後藤:表現者である以上、何かしら感じることがあれば言うべきだと思いますけどね。自分が思っていることを表明するだけですから、恥ずかしがったり怖気づく必要はない。そういう意味では、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」はスポンサーから怒られることもないし、しがらみはないですから。

津田:ちなみに『THE FUTURE TIMES』など後藤さんの社会的な活動に対して、「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のほかのメンバーは何と言っていますか?

後藤:応援してくれていますね。ただ、心配されています。僕があまりにも忙しくしているので、倒れないかどうか。

津田:二足、三足、四足のわらじを履く生活だと、時間的にも体力的にも限界がありますからね。しかもメディアを運営するとなれば、動いている時間以外にも勉強してインプットしないといけない。後藤さん、倒れないでくださいね……。ところで、『THE FUTURE TIMES』の取材を重ねる中で、原発や自然エネルギー以外に「この分野が面白い」と興味を抱くようになったテーマってありますか?

後藤:第3号では農業を取り上げたのですが、[*11] これが興味深かった。日本の農業には問題が山積されています。その一つに、打ち捨てられている農地——耕作放棄地の問題もあるんですけど、同時に農業の技術が次の世代に伝わらなくなってきている。畑や水田を手放すということは、その家系や地域に受け継がれてきた技術を失うということなんですね。音楽の世界でも似たような問題があるので、他人事とは思えなかったです。

津田:音楽業界でも技術者が少なくなってきている、と。

後藤:たとえばスタジオでの録音技術なんかはそうですよね。

津田:なるほど。確かに音楽業界でもデジタル技術の発達によって、失われつつある技術は多いかもしれませんね。以前坂本龍一さんにインタビューしたときに聞いた話なんですが、以前ニューヨークには、ピアノの音を綺麗に録ることができるマイクに精通したエンジニアがたくさんいたのですが、今はもう2人だけになってしまったのだそうです。

後藤:そんな問題は音楽業界に限った話じゃないと知って、興味をかき立てられたわけです。どうやって技術をつないでいけばいいのか——。

津田:失われて初めて価値に気づくのなら、手遅れになる前に手を打ちたい。メディアを通じて、いかに多くの人に広められるかが重要なんでしょうね。

 

◇東北、福島第一原発、そして官邸前デモについて

高橋:ここからは、後藤さんと一緒に被災地のこれから、そして原発について考えてみたいと思います。震災以降、後藤さんは何度も被災地を訪れて取材などをしているそうですが、最近はどちらに行かれました?

後藤:岩手県の大船渡市や陸前高田市、住田町などを含む気仙地域で7月に開催された「KESEN ROCK FESTIVAL」[*12] ですね。その機会を利用して、住田町でバイオマスに取り組む若い林業家たちを取材したんです。[*13] 住田町は林業の町で、僕は『THE FUTURE TIMES』創刊時から足を運んでいるんですね。以前、町長の多田欣一さんにもお話を伺ったのですが、[*14] 震災後、住田町は国や県の対応を待たずに地元の木材を使って「応急仮設住宅」[*15] を建て始めたんです。多田町長の発案が震災からわずか4日後で、町議会のメンバー全員に伝えたのが10日後。最終的には町長の「専決」ということで、面倒な手続きをすべてすっ飛ばしたらしく、まさに英断だなぁと感心しました。

津田:僕も先日、東北を取材中に林業にまつわる話を聞きました。震災で甚大な被害を受けた一次産業の中でも、農業はとにかく頑張る、でも漁業がしんどい、と。漁業再建の足かせになっているのが、漁業と、それから林業の担い手が少ないことらしいんですね。なぜ林業が関係あるのかと思いませんか? 実は、林業がしっかり機能する土地では川の上流の淡水が綺麗になり、海に流れ込む水の水質が上がるんです。[*16] そうすると、養殖の牡蠣や帆立が健康に育つ。それにバイオマスもあわせて、個人的には今後の東北を考えるうえで「林業」が一つの鍵になってくるのかなという気はしています。

後藤:住田町では切り出した木材のうち、使えない端材などはかなりの量が山に捨てられます。それが雨に流されて少しずつ集まり、長い年月をかけて積み重なる。豪雨でそれらが一気に流れ出し、林業や農業などに大きな被害をもたらすこともあるらしいんです。[*17] 一昔前は、木材として利用できない切り株や端材はパルプにしていたらしいのですが、輸入品の普及で国際競争に勝てなくなってしまった。チップにすればボイラーなどに使える——バイオマス燃料として活用できるのに、まだそのシステムが整備されていない状況なんです。とにかくそこを打開したいですね。

津田:ほかに東北を回られた中で、特に印象的だったのはどの地域ですか?

後藤:いろいろありますけど、やっぱり福島県の南相馬は特別でしたね。現地の人たちの怒りやとまどいとを耳にすると、かける言葉もないというか……。

津田:よくわかります。僕も2011年の4月に初めて南相馬を訪れました。現地で取材していると、津波被害があった海岸付近以外はまったく変わっていない——震災の爪痕が目に見えないんですよ。これまでと変わらない風景のはずなのに、原発事故の影響で地元の人たちは住めなくなってしまった。彼らと話をしていると、胸がぎゅっと締め付けられるような気がしましたね。実はこの「JAM THE WORLD」でも2011年の10月に福島県へ取材に行ったんです。いわき市の北のほうにある久之浜町というところなんですけど、後藤さんもそこを訪れたことがあるんですよね?

後藤:はい。2011年の9月に、久ノ浜浜風商店街 [*18] という地元の仮設商店街の立ち上げを記念したお祭りがあって。そこで何曲か歌わせていただきました。

高橋:福島に行って現地の状況を知れば知るほど、私たちにどんな支援ができるのかわからなくなってしまいます。ましてや、行ったことのない人はもっとわからないと思うんです。後藤さんはこれから福島のために何をすべきだとお考えですか?

後藤:そうですね……とにかく外から福島を責めるのはやめてほしいです。現地で暮らしている人に対して「そこには住めない」と言う人がいるじゃないですか。一方、県外に避難した人たちに「どうして逃げた」なんて心ないことを言う人もいる。どちらも大きなお世話で、僕たちがすべきは、福島の人たちの望みを叶えるために何が最善の策なのか、みんなで考えることだと思うんですよね。たとえば「福島に留まりたい」という人に対しては、どうすればリスクやストレスを軽減してあげられるのか考える。また、自主的・強制的に避難されている方には、住み慣れない土地で生活するためケアが必要です。放射能の問題は難しくて、正直なところ僕も何が正解なのかよくわかりません。だから、みんなが疑心暗鬼になるのは理解できるし、立場が違えば考えが違うのも当然です。この問題に「これだ!」という絶対的な答えなんてないと思うので、困っている人の声を一つずつすくい上げていくしかないですよね。

津田:今も福島に留まっている方もいれば、自主的に避難している方もいる。どちらの選択も尊重されるべきだし、双方に対してきちんとケアをしていくのは政府や東電の責任だと思うんです。ありきたりな質問になってしまいますが、3.11以降の政府による福島への対応を見ていて、後藤さんはどんな感情をもっていますか?

後藤:はっきり言って恥ずかしいですよね。歴史に残るほどのシビアアクシデントが起きたのに、未だに政治家たちは政局——要するに主導権争いをしているわけじゃないですか。いくらなんでも見苦しすぎる。

津田:次の総選挙まであと2カ月——そんなことが囁かれ始めて以来、メディアは連日のように選挙に向けてバタバタする政治家たちの行動を報道していますね。僕はそんなメディアの姿勢にも苛立ちを感じていて、「ほかにもっと伝えるべきことがあるだろ」と思ってしまう。「勝手にしてろ」って話ですよ、ほんと。

後藤:確かにおっしゃるとおりです。ただし一方で、そういう状況を育んできたに責任は、われわれ有権者にもあるんですよね。だから、政治家やメディアを一方的に責めるのではなく、これからは僕たちも自分の頭で物事を考え、しかるべき選択をしていかなければならない。実は今日、ツイッターのフォロワーの方から届いたメッセージがあって、「政治家を評価するにあたり『あなたは3.11から今日までどんな行動をしてきたか』と聞いて回ったほうがわかりやすい」と。僕もその意見に同意しますね。

津田:そういうことを聞いて回り、ネットで公開していくのもいいかもしれませんね。

高橋:そんなふうに原発問題やエネルギー政策について考え続ける後藤さんが、今年6月、毎週金曜日に総理官邸前で行われている反原発抗議デモに参加されました。[*19] 参加した理由は何だったのでしょう?

後藤:大飯原発の再稼働に至るプロセスがめちゃくちゃだと思ったことが最大の理由ですね。国際原子力機関(IAEA)は原発の安全性確保のため「五層の防護」という考え方を示しているのですが、大飯原発はそのうち三層目までにしか対応していないんですよ。[*20] 未整備の四層目と五層目は、実際に原発事故が起きてしまった場合の対応——具体的には、事故収束にあたる作業員を収容する免震施設や、格納容器ベントフィルターの整備、避難計画の見直し、安定ヨウ素剤の備蓄などです。これらの基準を満たさないまま再稼働を急ぐなんて、福島第一原発事故の教訓がまるで活かされていないと思わざるを得ません。

津田:さまざまな議論がありましたが、最終的には6月上旬に野田佳彦首相と関係閣僚の判断で再稼働が決まりましたからね。[*21]

後藤:野田首相自身、会見で「政府の安全判断の基準は暫定的なもの」だと認めている。ルールを守らなくても政府の判断で動くのなら、「ルールはありません」と言っているようなものですよね。今回、僕がデモに参加したのは、それに納得がいかなかったからです。今すぐにすべての原発をなくすのは難しいのかもしれない。でも、せめて国民にわかるように説明を——というか、説明以前の問題ですよね。安全を担保しないまま再稼働を始めるなんて、めちゃくちゃだとしか思えません。

津田:そういう重要なことを報じる時も、マスメディアはどうしても政局と絡めて報道してしまうので、国民が問題の本質に気付けないという状況もあると思いますね。だからこそ後藤さんはメディアを作っているし、僕も自分でメディアを作って情報発信している。『THE FUTURE TIMES』を1年以上続けてきて、実際にメディアを運営してみてわかったこと——辛かったことや面白かったこと、醍醐味なんかはありますか?

後藤:言葉を紙に書きつけることの強さを知りましたね。ダダ漏れでない、編集された言葉はやっぱり強い。

津田:紙媒体をストックな情報だとすると、読者にすぐ言葉を届けられるツイッターなどのソーシャルメディアはフローな情報だとよく言われます。『THE FUTURE TIMES』もまさにそうで、ツイッターで大勢の人の心を動かして紙媒体へと誘導する。「あとは『THE FUTURE TIMES』でじっくり読んでくださいね」といったような、緩急つけた情報発信が肝になっていくんでしょうね。

高橋:今後は『THE FUTURE TIMES』でどんなメッセージを発信していこうとお考えなんですか?

後藤:次の第4号では、福島の現状をトップ記事にもってくる予定です。年内に発行できればと思って作業しているところですね。

津田:いつまで続けるつもりなんでしょう?

後藤:『THE FUTURE TIMES』を始めた時に、ひとまず3年——12号までは出すのを目標にしました。まずはそこまでやってみて、その後のことはその時考えようという感じですね。だから3年は自分の財布と相談しながらやっていきますよ。

高橋:そして「ASIAN KUNG-FU GENERATION」としては、最新アルバム『ランドマーク』[*22] を9月12日にリリースされる予定です。先ほど、このアルバムから1曲選んでほしいとお願いしたら、後藤さんは「大洋航路」[*23] を選ばれました。この曲を選んだ理由はあるのでしょうか?

後藤:ロックンロールって、追い詰められた時の音楽なんですよ。どんなに厳しい状況でも、痩せ我慢をして「大丈夫」だと歌う。この曲ではそのことをストレートに歌っているので、何かしら伝わるものがあればいいな、と。

高橋:なるほど。確かに、何かに絶望している時、私たちはたまたま聴いた音楽に救われることも少なくありません。それでは、ここでそろそろお時間となってしまいました。後藤さん、今日は本当にありがとうございました。

津田:ありがとうございました。

後藤:ありがとうございました。

 

▼後藤 正文(ごとう・まさふみ)
ロックバンド「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のヴォーカル&ギター。1996年、大学在学中にバンドを結成し、2002年、インディーズ・レーベルよりミニアルバム『崩壊アンプリファー』をリリース。2003年4月、同作がキューンレコードより再リリースとなり、メジャーデビューを果たす。その後発売されたシングル「君という花」「サイレン」が立て続けにヒット。以来、日本のロックシーンを牽引する存在として多数の楽曲を発表し続けるほか、ライブ活動も精力的に行う。また、2011年7月には、自らが編集長を務めるフリーペーパー『THE FUTURE TIMES』を創刊。「新しい時代のこと、これからの社会のこと。未来を考える新聞」として、さまざまなメッセージを世の中に発信している。

公式ウェブサイト:http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/
『THE FUTURE TIMES』:http://www.thefuturetimes.jp/
ツイッターID:@gotch_akg

 

[*1] http://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/AKG/

[*2] https://twitter.com/gotch_akg

[*3] http://www.thefuturetimes.jp/

[*4] http://www.fujirockfestival.com/

[*5] http://acf.main.jp/

[*6] http://www.thefuturetimes.jp/archive/no01/life311_02/

[*7] http://www.saikai-sangyo.com/pellet.htm

[*8] http://hi-standard.jp/

[*9] http://www.thefuturetimes.jp/archive/no03/kenyokoyama/

[*10] http://www.maff.go.jp/j/biomass/

[*11] http://www.thefuturetimes.jp/archive/no03/miyagi/

[*12] http://www.kesenrockfes.com/

[*13] http://www.thefuturetimes.jp/archive/no03/biomass01/

[*14] http://www.thefuturetimes.jp/archive/no01/life311_01/

[*15] http://www.rinya.maff.go.jp/j/kaigai/pdf/sumita.pdf

[*16] http://www.shinrin-ringyou.com/forest_japan/shinrin_kinou.php

[*17] http://neps.nef.or.jp/case_02_sumita.html

[*18] http://hisanohama-shops.com/

[*19] http://www.thefuturetimes.jp/gotoh/2012/06/4511622-iaea53.php

[*20] http://news.mynavi.jp/c_cobs/news/eyenews/2012/06/post-222.html

[*21] http://www.kantei.go.jp/jp/noda/statement/2012/0608.html

[*22] http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B008CQCAZ2/tsudamag-22

アルバム収録曲の『バイシクルレース』と『踵で愛を打ち鳴らせ』のPVがYouTubeの公式チャンネルでフル視聴できる。
http://www.youtube.com/user/akgSMEJ

[*23] http://www.uta-net.com/song/134877/

最終更新: 2012年11月19日

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