ハフポストが示した「ネットメディアが金になる時代」の到来
ブログ
ハフィントンポスト開設おめでとうございます。ジャーナリスト/メディア・アクティビストの津田大介です。
めっちゃ久しぶりのブログを書いてます。といっても、実は僕、物書きとしてはかなり古参のブロガーでして、2002年1月11日より「音楽配信メモ」というブログを開設しまして、もうここ数年ろくに更新はしていないのですが、デジタルコンテンツがどうコンテンツビジネスに影響を与えていくのか、その最前線のネタを日々クリッピングし、コメントをしていました。
当時はブログという言葉もほぼ認知度がなく、まともなホスティングサービスもなかったので、ウェブで配られていたフリーのCGIを@niftyのホームページサービスに自分でインストールして、サイトの更新を始めました。
当時僕が作っていたブログのスナップショットがInternet Archiveに残されています。すごいでしょ、このWeb1.0感! いや、Web1.2くらいを目指して作っておりました。
数ヶ月運営したら割とすぐに人気サイトになったので1年足らずで「xtc.bz」というドメインを取得して、その後もブログツールなどを変えたりしながら細々と更新を続けておりました。実は日本で一番最初に開催されたブログアワードである「Blog of the Yeah! 2003」で、音楽配信メモは審査員特別賞を受賞しているのですね。それぐらいには僕も「ブロガー」だったわけです(笑)。
ブログをもっとも熱心に更新していたのは2002年〜2005年くらいまでですね。僕がブログを始めた動機と目的はめっちゃ明確で、当時僕が書いていた「インターネット雑誌」というジャンルが世間からどんどん必要されていかなくなって廃刊が相次いでいたので、まだ金銭的・体力的な余裕があるうちに、ライターになってずっと取材をしてきた知識や意見の棚卸しをして、それをきっかけに新しい仕事を開拓できればと思っていました。
より具体的な目標はこういうことです。
「ブログがきっかけで”デジタル音楽”というジャンルの専門家であると、メディア業界の人間に認知してもらい、仕事依頼が来るようにする」
「無料のブログでどこまでマネタイズできるのか可能性を確かめる」
1つ目の方はブログを1年くらいやって割とすぐに達成できました。この音楽配信メモというブログがきっかけで『だれが「音楽」を殺すのか?』という単行本の依頼が来て、その単行本を出版したことが僕にとっての「ジャーナリスト」としての名刺になり、仕事の幅が広がっていきました。『だれが「音楽」を殺すのか?』がなければJASRACのシンポジウムに出演することは叶わなかったでしょうし、その後文化庁から審議会の専門委員として呼ばれることもなかったと思います。ちなみに、今の僕はネットを使って国民の政治参加を進めるということを大きなテーマにして活動していますが、それも審議会の専門委員として政策形成過程に関わったことが大きなきっかけになっています。ブログ(2007年以降はツイッター)が仕事の幅を広げてくれたし、自分の興味の方向も決定づけたということですね。
2つ目は今僕がやっている有料メルマガ『津田大介の「メディアの現場」』ともつながる話ですが、これも割とすぐ2年くらいで方向性が見えました。更新を頻繁にしていた2004年くらいにAmazonのアソシエイト・プログラムに加え、Google Adsenseが盛り上がっていました。ブログは更新をしていて、面白い記事を書けばアクセスが集まってきます。最盛期はAmazonとAdsenseで月10万円くらいの収入がありました。変な話なのですが、僕はブログだけで月10万円の収入を達成したことでブログに対する情熱を失ってしまった部分があるんです。「あ、別に俺、いざとなったら雑誌がどれだけダメになってもブログを真剣にやれば必要最低限の収入は確保できるな」っていう自信が付いたとも言える。この自信があったからこそ、大山卓也と一緒にナタリーを立ち上げようと思ったわけですね。
もう10年以上前からずっとネットで情報を発信して、それをどうすればマネタイズできるのかということを真剣に考え、いろいろ失敗しつつもそれなりの結果を出してきた—-この部分こそが僕がほかの物書きの人とのもっとも大きな違いなんだと思います。
そういった心境の変化もあり、さらなる実験をしたいと思った僕は2006年ごろからオールドメディアへの足がかりとなる単行本を執筆したり、ナタリーの立ち上げをしたり、think C、MIAUなどの社会活動に身を投じていくことになります。2010年ごろまで金銭的には辛い時期が続きましたが、それもまた良い下積み経験だったなと思っています。
メディアでビジネスをしたい。そして自分の作ったメディアを大きくしていきたい。僕がいろいろ実験的な活動をし始めた2006年ごろ、ハフィントンポストも産声をあげました。ハフィントンポストにはずっと注目はしていたんですが、個人的に衝撃を受けたのは2011年2月、AOLに260億円で買収されたことです。
ナタリー創業当初、いろいろなベンチャーキャピタルを回ったりしていたんですが、当時ナタリーの成長性や成功を予見できたベンチャーキャピタルはどこもなくて、結局のところどこもお金は出してくれませんでした。当時ベンチャーキャピタルの担当者からはずいぶんと屈辱的なことも言われたので、今でもそれを思い出す度に「ベンチャーキャピタルとかみんな早く潰れろ!」とか大人げないことを思ったりします(笑)。とはいえ、ネットメディアが安定して面白いことや好きなことをやるにはどうしたってお金は必要になります。上場ではなくバイアウトという形でネットメディアを育てることはできないのかとずっと思いながら独立メディアを作る方法を考えていました。
そんななか、ハフィントンポストとTechCrunchがほぼ同時期にAOLに高額で買収された。僕は「これだ!」と思ったんです。ネットメディアが金になる(投資対象になる)—-それが大きな実例として出てきた。これは何より僕を勇気づけました。
ということで、満を持してハフィントンポストは日本に上陸したわけですが、とてもとても期待しています。ハフィントンポストが日本でも成功することで、僕はハフィントンがカバーしている分野は自分がやらなくても済むようになる。ハフィントンがやらない分野で僕なりのメディアを作り、それがネットメディアならではのゆるい連携でお互いにアクセスを与え合う。そうやってネットメディアそのものの地位が上がっていけば、この国のメディア状況も多少は良くなるだろうという期待を抱いています。
「ブロガー」としての僕はもはやポンコツで、毎週出してる有料メルマガでひーひー言ってる状況なので、あんま更新とかは頻繁にはやらないと思いますけど、多くの人に広めたい記事とかは、メルマガやほかのところに書いた文章とか、そういうのを引っ張ってきてこのブログに載せていきたいとも思っています。
ということで、久しぶりにブログ文体で書いてみました。気軽にノリで書けるブログってやっぱいいね! あ、最後に宣伝ですけど、月630円の週刊有料メルマガやっておりますので、メディアに興味がある方はぜひご購読いただければありがたいです。
そんじゃーね!